女子レーサー200人の個性

1600人を越えるボートレーサーの中で、女性レーサーの数はおよそ200人。ひとたび水上に出れば性別は関係なく、一斉にゴールラインを目指し火花を散らす。

男女混合の水上格闘技

ボートレースは男女が入り混じって戦う競技だ。一般的なスポーツ競技では男女が同じ条件のもとで勝負することはほぼないが、ボートレースでは男女それぞれに定められた最低体重制限を除き、同じ条件でゴールを競い合う。男女が同じ舞台に上がり、互いに激しく競り合う光景を見ることができるのはこの競技の魅力のひとつだろう。

しかし、艇を操るのに強靭なフィジカルが求められるボートレースにおいて、肉体的な差異とその影響は大きい。一般的に男性選手と比べて筋肉量が少ない女性選手は、レース時に大きく暴れる艇のコントロールが難しくなる。また、体重が軽いため先行するボートが起こす引き波の影響を受けやすい。

その差は時に大きな武器にも転じる。体重が軽ければ、そのぶんボートの接水面積が少なくなり、艇が加速しやすくなるのだ。特に直線ではその武器が大きく作用する。旋回でスピードを落とした後の復帰が素早く、女性選手が後方から男性選手を抜き去っていく、といった、予期せぬ逆転が起きる。

守屋美穂選手

2007年にデビューした守屋美穂選手は2018年の「第5回レディースチャレンジカップ」を制すなど数々の実績を残す選手だ。2019年に芦屋で開催された「G2モーターボート大賞次世代スターチャレンジバトル」では女性として6年ぶりの男女混合記念優勝を飾っている。優勝レースは、インコースからトップスタートを決めて、後続を大きく突き離す「逃げ」で勝利を収めた。

「私自身は、女性、男性の差はあまり意識したことがないんです。同じように女子戦だから、男女混合だからというのもあまり気にせず、常にフラットな気持ちでレースに臨んでいますね。G2のときは、エンジンと自分を信じて走りました」

重たいバーベルを持ち上げ続けた経験が、
ボートレースに生きている

守屋選手の歩みを見たとき、まず目を引くのはその個性的なキャリアだろう。彼女はボートレーサーになる以前はウエイトリフティングの高校生選手として活躍しており、2006年の高校生女子のウエイトリフティング大会で、なんと48kg級の日本一に輝いている。

中学校では管弦楽部でバイオリンを弾いていたという守屋選手。それまで運動経験はほとんどなく、高校でウエイトリフティングを始めたのはボートレーサーになるための体力づくりが目的だったという。

守屋美穂選手

「実家の近所にボートレース場があって、父の勧めもあり小さい頃からボートレーサーに興味がありました。ウエイトリフティングはそのための筋肉や体幹を鍛えるのが目的だったんですが、結果としてアスリートとして気持ちの面が鍛えられたことの方が現在に生きていますね。入部したときに15kgのバーすらも上げられなかったのが本当に悔しくて、周りに負けないよう懸命に努力した経験は忘れられません。」

水上では、男女皆がおなじ「ボートレーサー」になる

守屋選手は2019年現在、ボートレーサーとして最上級のA1級で活躍している。A1級の所属選手は全レーサーの上位20%ほど、女性選手に絞ると約1.3%と、トップで男性選手と渡り合える女性選手は決して多くはないのが現状だ。

体格差や重量差を乗り越えて、女性選手は果敢にレースへと挑む。守屋選手がこれから勝ち抜くために必要と考えていることは何なのだろうか。

守屋美穂選手

「技術を磨くことも大事ですが、やはり気持ちの部分が大きいですね。ウエイトリフティング時代に周りに負けないよう必死に努力したのが、自分の糧になっています。男性選手と女性選手の違いはあれど、水上ではみんな同じ。男子だから女子だからとは気にせずとことん勝負を仕掛けていきたいですね」

華奢な体躯に秘めたパワーで、守屋選手は今日もレース場を駆け抜ける。

ボートレース芸人・永島知洋に聞いた守屋選手

ボートレース芸人・永島知洋

守屋選手はどの位置からでも勝負に絡む、攻めの姿勢が素晴らしい。普段はおだやかな雰囲気だが、ヘルメットをかぶると一転、勝負師の表情へと変わる。GⅡ制覇で満足するのではなく、さらに上のタイトルを目指しているはず。今後も攻めのスタンスを崩さず、観客へ夢を与えてほしい。

守屋美穂(もりやみほ 1989年1月20日生)

登録番号4482 身長153cm 101期 岡山支部所属
可愛らしい雰囲気にそぐわないパワフルエピソードとのギャップ萌えから、「艇界の怪力美人レーサー」の異名で呼ばれる。 

守屋美穂選手