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お子さんが生まれたことで変わったことはありますか?
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子どもがいるから、という余裕はできました。
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心の余裕ってことかワン?
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そうですね。ボートレーサーは、誰もが毎試合「勝ちたい!」という強い思いを持ってレースに臨んでいます。だから自然とレースは白熱しますし、自分の思い通りのレース展開にならない日だってある。結果、負けたらむちゃくちゃ悔しいし、落ち込むわけですよ。
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うんうん。
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そんな日も、「帰ったら、大好きな子どもに会える」。そう思ったら、気分が楽になって、暗い気持ちを引きずらなくなりました。
幼いころの颯太君を抱っこする香川選手
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わかるワン! びす太も辛いとき、「もうちょっとでご主人様に会える」と思ったら、がんばれるワンよ。
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もう! びす太のことはいいから、香川選手の話が聞きたいの。
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いえいえ、私もびす太くんと一緒です。「大好きな存在」ができると、人はがんばれますよね。
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えっへん! じゃあ、レースに臨む姿勢にも変化はあったワンか?
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すごい冷静に、周りを見ることができるようになった気がします。子どもが生まれる前は、「とにかく全速力で走ればいい」と思ってたんですけど、それじゃ勝てない。
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速いだけじゃダメなんですか?
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はい。ボートレースは、最短距離で第1ターンマーク(折り返し地点)に進入できる1号艇から、いちばんアウトコースを走る6号艇まであり、自分のスタートポジションを意識した戦略、そして風を読むことが重要なんです。
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カゼヲヨム……?
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うーん、そうなんですけど、風車は使わないですね(笑)。
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レースでは、自然も味方につけなきゃいけないのね。
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はい。私は子どもを産んだ後の方が、落ち着いて状況を捉えて、都度適切な判断をしながら、レースを運べるようになりました。
風を読み、相手の動きも読みつつ、ターンマークで冷静にターンをする香川選手
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まさに、母は強し。子どもが生まれたことで、レーサーとしてもレベルアップできたんですね。
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そうですね。
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でも、育児と仕事の両立は大変そうワン。
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やっぱり、周りのサポートがあったからできたことですよね。ボートレーサーって、レースに出るとなると、1週間も家を空けるので、サポートは不可欠でした。
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颯太くんは寂しがらなかったですか?
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運動会に行けないとかはあったんですけど、「寂しい」とかは言わなかったですね。子どもなりに、私の仕事を理解してくれていたんだと思います。
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偉いなー。びす太、もし1週間もご主人様に会えなかったら、泣いちゃうワン……。
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颯太も泣きたい気持ちはあったと思うんですけど、一緒にがんばってくれたんですよね。
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わかったワン。きっと日々がんばるその背中を見て、颯太くんもレーサーに憧れたんだワンね!
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うんうん。颯太くんが「レーサーになりたい」と知ったときは、うれしかったんじゃないですか?
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第一声、「向いてないよ」って、言いました(笑)。
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優しいんですよ、性格が。高校生のときも向いている職業判定で「保育士さん」って出るような子でしたから。
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だけど選んだ職業は、ボートレーサー。人生はわからないワンね。
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そうですね。ただ、彼にとって、小さい頃からボートレースという存在が近くにあったことはたしかなので、自然と「やりたい」という気持ちが芽生えたのかもしれないですね。
ボートレーサー養成所の入所式にて。
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いまでは、親子レーサーとしても注目されていますよね。
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親子レーサー自体は、それなりにいるんですよ。ただ、「母と息子」の親子レーサーは、ボートレース界では初。それで注目してもらっています。
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おっ、びす太もわんこ界初のインタビュー犬として、注目を浴びまくってるワン。
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初はびす太じゃなくて、私でしょ!
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(笑)たしかに! 犬に取材されるなんて初めての経験ですよ。
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先輩として、颯太選手にアドバイスすることもあるの?
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ありますね。「あそこ、なんであんなスピード出したん?」とか、言います(笑)。
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ズバっと言うワンね……。颯太選手は正直、イラっとしていると思うワンよ!
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はははは。普通なら、「うっせーな」とか思うかもしれないですけど、素直に聞いてくれますね。ほら、優しいから(笑)。それにたぶん、いまはまだ、私の方が上手いですし(笑)。
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母としてもレーサーとしても、ちゃんと尊敬されてるワンね。仲もよさそうワン。
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いまも近くに住んでますし、仲はいいと思います。ちなみに去年、颯太の20歳の誕生日は、有馬温泉で一緒にお祝いしました。
颯太選手を囲み、みんなで食事会
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温泉、楽しそう! びす太も入りたいワン!
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香川選手にとって、息子さんはどういう存在なんですか?
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心配しかしてないですよ。ちゃんとレーサーとして、ステップアップしていけるのかなとか、いろいろ思いますよね。親ですから。
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ちなみに、颯太選手も含めて、「負けたくない!」と思うレーサーはいるワンか?
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颯太についてはむしろ、早く追い越してほしいと思ってます。「負けたくない!」で言うと……。
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うんうん。
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いまはそんな人いないですけど、昔は女子レーサーに対して、敵対心剥き出しの方もいたんですよね。そんな人には「絶対負けん!」と当時は思ってました(笑)。
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そう考えると、時代は変わりましたよね。近年の女子レーサー人気もあって、ボートレースを知ってくれる機会が増えて、むしろ「ありがとう」と感謝されることもあるくらいですから。
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今後の目標や夢を教えてほしいワン!
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まだ颯太と一緒に走ったことがないので、いつか実現したいですね。ただ、それは思い出作りというよりも、「“先輩レーサーとして”教えたいこと」があるからです。
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教えたいこと?
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はい。ボートレースにはボートのプロペラの調整とか、なかなか口だけでは伝えられない技術があります。一緒に走る機会があれば、それを教えてあげられるなと思うんです。まあ、レースは私が勝つと思うんですけど……(笑)。
母と息子でいっしょに訓練をしている様子。
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強いママ! カッコいいワン!
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最後に「イヌタビュー」読者の方にメッセージをお願いします!
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いまはイケメンも多いし、かわいい女子レーサーも多い。まずは好きなアイドルを探すように、推しレーサーを見つけることから始めると、ボートレースに入りやすいと思います。
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……イケメンレーサー!
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……かわいい女子レーサー!
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(笑)。そして全国のお母さん! 実はボートレース場には、子どもが楽しめる遊具がたくさんあるんです!ショッピングモールのキッズスペースに遊びに行くような感覚で、ぜひ親子で遊びに来てもらえたらうれしいです。そのとき、もし私が出走していたら、応援してください。全力で走ります!