推しメンレーサー パワーのルーツ 02 Intelligence 知力 永井彪也×馬場剛
0.01秒の差が勝負を分けるボートレースの世界。水上の格闘技と呼ばれる激しいレースに挑むボートレーサーたちの本音に、さまざまな“パワー(力)”の切り口から、ボートレース芸人 永島知洋さんが迫ります。
今回のテーマは「インテリジェンス(知力)」!
MC
永島知洋
Profile
プロフィール
永井 彪也
ながい ひょうや
1992年、東京都生まれ。東京支部。109期。2019年、ヤングダービーで優勝。2021年、まるがめの69周年記念においても優勝し、2度目のG1制覇を達成した、東日本の若手エース
馬場 剛
ばば つよし
1992年、東京都生まれ。東京支部。112期。2022年、ルーキーシリーズ第4戦「第7回スカパー!・JLC杯」で優勝。屈指のスピードを誇る若手レーサーとして、注目されている
ふたりの関係は?
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永島 知洋
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今回のテーマは「インテリジェンス」です。まずはおふたりの関係から聞いていいですか?
左上から時計回りに、永井彪也選手、ボートレース芸人 永島知洋さん、馬場剛選手
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永井 彪也
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僕の方が3期、1年半くらい先輩なんですが、同い年ということもあって、仲良くさせてもらっている“つもり”です。
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永島 知洋
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……つもり?どういうこと?(笑)
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馬場 剛
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仲はいいと思います。でも、先輩は先輩なので、そこはやっぱり……。
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永井 彪也
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そんな動き、見せたことないけどな(笑)。
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永島 知洋
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最初こそ気を遣ったけれど、みたいなことですか?
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馬場 剛
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……ですね。
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永井 彪也
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いやいや、最初からフランクな感じでしたよ!支部も一緒ですし、練習でもレースでもよく会う。年齢も同じとなれば、自然と仲良くなりますよね。
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永島 知洋
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ひょっとして、馬場選手、嘘つきました?
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馬場 剛
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……若干(苦笑)。
シュールな返しで、場を盛り上げる馬場選手
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永島 知洋
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なんでよ(笑)。ちなみに馬場選手、永井選手の第一印象を聞いてもいいですか。同い年だけど先輩だし、男前だし、なんやねん! とか思いました?
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馬場 剛
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そうですね。天は二物を与えたなと思いました。
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永島 知洋
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顔も実力も、すごいリスペクトから入ってるやん!(笑)。
ボートレーサーに求められる「知力」とは?
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永島 知洋
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そんなおふたりに聞きたいのが、ボートレースにおける「インテリジェンス(知力)」についてです。ボートレースには、整備やターン、レース展開における駆け引きなど、知識や経験を求められる場面が多くありますよね。
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永井 彪也
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そうですね。どれもなかなか数値化できるものではないので、経験則によって、育まれる部分は大きいように感じます。じゃあレース中は感覚で動いていて、何も考えていないのかと聞かれれば、むちゃくちゃ考えてますね。
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永島 知洋
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たとえば?
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永井 彪也
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ボートレースにおいては、スタートが非常に重要です。ですが、ボートは波の影響を受けますから、それも計算したうえで、最適なタイミングでスタートを切るためにはどうボートを操縦すべきか、とかですかね。
ボートレースでは、助走から準備し、決められたタイミングでスタートを切る「フライングスタート」方式が採用されている
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永島 知洋
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なるほど。0.01秒の差で勝敗が決することもありますし、本当にちょっとした判断ミスが敗因になることもありますもんね。ボートレーサー養成所では、そういったことも習うんですか?
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永井 彪也
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習わないですね。だからこそ、経験が重要なんです。デビューから間もない頃は、まずは自分なりの「標準」を決めて、そこを基準に、風や波などを計算して、プロペラやエンジンを整備していました。
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馬場 剛
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本当に細かな部分が多く、言葉では表現しづらいんですが、ひたすら練習を重ねながら、足し算と引き算を繰り返すことで、レーサーそれぞれの「答え」を探している気がします。
水面と風、どちらの流れを重視するか?
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永島 知洋
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レースでは、水面の流れと風の流れ、どちらも意識すると思いますけど、どちらを重視していますか?
ボートレースは屋外を走るため、波や風の影響を受けやすい
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永井 彪也
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パワーがあれば、どちらも対応はできるかなと思います。
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馬場 剛
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だからこそ、レース前の整備が重要で、しっかり仕上げることができれば、環境の変化にも柔軟に対応できると思います。
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永井 彪也
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ボートレースは、自然との戦いでもあるんです。たとえば、練習では向かい風が吹いていたのに、本番では追い風だった、なんてことが平気で起きます。では、どうするか。待機時間のおよそ1分の間に、変化に対応し、自分なりの「正解」を導き出さないといけないんです。
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永島 知洋
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もし練習と同じ、向かい風を想定して走ってしまったら、「フライング」してしまう可能性もありますもんね。
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永井 彪也
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はい。ボートレースは、決まったタイミングでスタートを切る必要がありますから、ちょっとした変化がレースの結果に大きな影響をおよぼすんです。風だけでなく、気温や湿度など、すべてを計算しないと勝てない。頭をフル回転させて、瞬時に判断する力が求められます。
レース中に気にしていることは?
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永島 知洋
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馬場選手がレースにおいて、いちばん気にしていることは何ですか?
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馬場 剛
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湿度ですね。急に湿度が上がると、モーターに影響が出ます。そうすると、スタートのタイミングが取りづらくなるんですが、自分はそれをチャンスと捉えて、勝負に行きます。もちろん、失敗することもありますが、うまくいくと、すごくうれしいです。
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永島 知洋
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さまざまな環境の変化を直に受けてしまう。そこがボートレースの難しさであり、面白さでもありますよね。
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永井 彪也
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そうですね。僕はその日の気温も気にします。気温の下がり方とか上がり方とか、レース当日の環境の変化を事前に把握することで、知識と経験によって対応したいと思っています。
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永島 知洋
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全国に24あるボートレース場は、海もあれば川もありますし、池もあります。まったく同じ条件ということは、ほぼないですもんね。だからこそ、プロペラの調整が重要になるわけですよね?
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永井 彪也
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はい。プロペラはモーターの調子も左右する重要な部分ですから、本当にミリ単位の調整をしていくのですが、ちょっとの調整で大きく変わるんです。だから調整しては走って、また調整しては走ってを繰り返しながら、ミリ単位の調整を続ける。そのなかで、正解を見つけていきます。
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永島 知洋
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ただ、乗るのがうまいだけじゃ勝てないんですね。
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馬場 剛
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そうですね。整備も基本はあるのですが、絶対的な「正解」があるわけではないので、なるべく頭をやわらかくして、プロペラと向き合うことも大切だなと自分は思っています。
レーサーとしての喜びは?
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永島 知洋
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移動も多いですし、ハードな日々を過ごされていると思うんですが、レーサーとしての「喜び」を感じるのはどんなときですか?
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永井 彪也
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僕は、1着を取った瞬間ですね。
真剣な表情でレースに臨む、永井選手
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馬場 剛
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やっぱり勝てるとうれしいです。勝負の世界なので、先頭を走っていないと楽しくないですよね。
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永島 知洋
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苦しい瞬間もありますか?
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永井 彪也
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僕はあまり「辛い」と思うことはないです。負ければ「悔しい」はありますけど、根本的には、好きな仕事をできている喜びに包まれています。
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永島 知洋
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ええ話やん。馬場選手は?
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馬場 剛
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うーん、10時前にスタートする「モーニングレース」の日は、朝起きるのが辛いですね(苦笑)。
レースに臨む、馬場選手
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永島 知洋
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朝、弱いんかい!
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馬場 剛
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でも、好きですよ。毎日早起きするので、日に日に健康になっていくような感覚があります(笑)。
ボートレースに活きている趣味は?
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永島 知洋
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おふたりは、ボートレースに活きている趣味はありますか?
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馬場 剛
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以前は、ラジコンが趣味でした。大会では何周もするので、「集中力」が必要で、これはボートレースにも活きている部分があるかもしれないです。
趣味の「ラジコン」では、細かなチューニングなども馬場選手自身がしている 画像:本人提供
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永井 彪也
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僕は少し前まで、宿舎での気分転換を兼ねて、ルービックキューブや知恵の輪をやっていました。あとは僕らふたりで、哲学的な話もします。
ルービックキューブで気分転換する永井選手
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永島 知洋
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哲学?
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永井 彪也
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ボートレースは、1着から6着まであります。勝者は1レースにつき、ひとりだけ。レース中は誰もが本気で勝利を目指している。だからボート同士がぶつかることもあれば、焦ってフライングすることだってある。そして何度経験しても、負けると悔しい。激しく心が揺さぶられる瞬間が本当にたくさんあるんですよね。その気持ちを整理するために、哲学的な会話をするのかなと思います。
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馬場 剛
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気持ちが整理できると、心も落ち着きますし、自分たちには必要だと思います。
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永島 知洋
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1レース自体はあっという間ですけど、そのなかで、レーサーたちは毎回、心を削りながら走っているんですね。
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永井 彪也
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だからこそ、レースで動揺しないように、日々、冷静さを保つことを意識して過ごしています。これは先輩にも負けないと、自分の中で自信を持っているストロングポイントでもあります。それと、寝付きのよさも負けません!(笑)。
読者に伝えたいメッセージは?
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永島 知洋
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では最後に、おふたりから、この記事を読んでくれている方に、メッセージをお願いします。
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永井 彪也
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僕は結局、ボートレースが好きで、楽しくて、真剣に毎回レースと向き合っています。そういう部分をぜひ、生で見てほしいです。常に勝ちたくて、レースに臨んでいます。ぜひ応援してください!
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馬場 剛
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この仕事に出会えてよかったと思っています。応援してもらえると、それがチカラになります。ボートレース場では、個性豊かなレーサーたちが本気で走っています。ぜひ、応援しに来てください!
「応援しに来てください!」と笑顔で呼びかける、永井選手と馬場選手