大学時代は警察官になりたいと思っていた
2023年の大晦日に女子レーサーの頂上決戦クイーンズクライマックスで優勝! 3月に開催されるボートレースクラシック(戸田)の出場権を獲得し、夫である中田竜太選手との“地元SG夫婦出場”が決まったことでも話題になった。そんな浜田選手も十数年前はボートレースを見たことがない女子大生だったというから人生はわからない。
「漠然と警察官になりたいと思ってたんです。でも、交番の前で立っている警察官を見て、ずっと直立していることは自分にはできないと気がつきました(笑)。そんなとき、兄の友人がボートレーサーとしてデビューしたと聞いて興味を持ったんです。中学、高校とバレーボールをやっていて、スポーツは好きだったので、体を動かすことを仕事にできるのは魅力的だなと思いました。願書を出した段階ではボートレースを見たことがなかったんですが、2次試験はボートレーサー養成所で行われたので、厳しそうなところだなと覚悟はしてました。養成所の試験に受かったのはすごく嬉しかったけど、不安もあったので、このときの気持ちは4点くらいですかね(笑)」
養成所時代も、あとから振り返れば「思い出の1年」だ。中田選手と出会ったのも養成所でのことだ。
私は広島で、彼は福島の人ですけど、“こんなに訛っている人がいるんだ!?”というのが第一印象でした。
「登録番号(同じ期では生年月日順)が1つ違いで、常に席が並んでたので、話す機会は多かったです。
ボートレーサーとしてデビューした頃は覚えるべきことも多く、「いっぱいいっぱい」になっていたという。
「レースのない日もプロペラを作ったり(当時はレーサー個人がプロペラを所有し、開発を行っていた)、練習に通ったりしていて、がむしゃらでした。練習後は先輩や練習仲間とお昼ご飯に行くのが日課になっていました。周りの人にも恵まれていたし、結婚前の広島支部時代は濃い3年だったと思います」
結婚、ケガ、出産……。ボートレースを辞めることは考えたことがない
中田選手とは2013年の1月に結婚し、中田選手が在籍する埼玉支部に移籍した。
「養成所を卒業したあとも、いつも連絡を取るようになっていたので、この人と結婚するんだろうなとは思っていたんです。結婚式の準備はめちゃくちゃ大変でしたが、当日はすごく楽しめたし、ドレスも着られたので10点満点です。主人の点数ですか?それも10点満点ですね。優しい人で、嫌なところはひとつもないです」
順風満帆な日々が続いていた中、この年の9月にレース中の事故でケガをしてしまった。
「成績があがってきていた中でケガをして、しばらく走れなくなったのはショックだったんですが、今振り返れば、あの時期に休みが入ったことで自分が変われた気もするんです。事故前までは、旦那や他のレーサーからも『目つきが怖い』と言われてたんですけど(笑)、休んだことで性格がやわらいだ気がします」
ケガからの復帰後も事故などがあり、B2級に降級している。
「当時のことは記憶が薄れたようになっています。結婚後やケガをした頃などは、旦那からレーサーを続けてほしくないと言われることがありましたが、辞めるという考えを持ったことはなかったですね。普通に生活していれば、こんなにドキドキハラハラ、心が動くことはないだろうと思いますし、ボートレースが大好きですから」
2015年11月には長男が生まれた。浜田選手の中では“人生最高点!”が付けられる出来事だ。産休からの復帰後も成績には波があったが、「子供がいたからこそ、つらいことも乗り越えられた」という。
気持ちに余裕を持つためにも10点より8点がいい
ボートレーサーとしての転機になったのは9年ぶりの優勝を果たした2022年6月の多摩川ヴィーナスシリーズだ。
「それまで優勝戦には乗れていても、そこで満足しているようなところがあったんです。記者さんに答えるコメントでも『優勝できたらいいですよね』みたいに曖昧な言い方をすることが多かったように、自分で逃げ道をつくっていた部分もあったんだと思います。言霊じゃないですけど、絶対優勝するという気持ちをしっかり口にするくらいじゃないと優勝はできないと気づいて、実際にそうしたことで優勝できた大会でした。この前年の2021年はレディースチャレンジカップにあと少しのところで出場できなかったため、どん底というくらい落ち込みましたが、2022年は出場することができてすごく嬉しかった。それで2023年は女子レースの最高峰であるクイーンズクライマックスに出場できる12人に入ることを目指そうと思いました。」
スタート事故には気をつけて「1年間、走りきりたい」と考え、それも果たせた。コンスタントに成績を残したことで目標としていたクイーンズクライマックス出場を決められたのだ。
「大会前はプロペラ調整に悩んで調子を崩してたんです。それを知ってる旦那からも『今回はとりあえずクイーンズクライマックスがどんなものかを見ておいでよ』と送り出してもらえて、リラックスして臨めたのがよかったのかなとも思います。大会中、広島時代の先輩たちからアドバイスをもらって、これなら大丈夫というプロペラに仕上がったのも大きかったですね。1号艇で優勝できたことでは、ほっとしました。もちろん10点満点です」
憧れだったSGの舞台に立つ瞬間は「9点くらいの気持ち」になるのではないかとも予想している。
「その後は8点くらいがキープできたらいいなって思います。ずっと10点でいたら、かえってきつくなる気もするので、気持ちに余裕を持つためにも8点くらいがいいですね」