ここ1、2年の成長著しく、女子戦線のなかでは主役級の一人になってきた渡邉優美選手。「自分にはセンスがないんで、練習に練習を重ねている感じです」、「やるしかないし、やればできると思っています」と本人は話すが、そんな彼女の6stylesは果たしてどんなものか?
Style1.オフには酵素風呂でリフレッシュ
オフに心がけていることがあるかを聞いてみると、「酵素風呂には7年くらい通っています」とのこと。酵素風呂は、見た目は砂風呂に近く、ヒノキパウダーなどの有機物を発酵させた中で体を温める「乾式の温浴法」だ。発汗作用があるのでデトックス効果なども期待できる健康法であり美容術でもある。
「精神統一につながるかな、ということで興味を持ったのが最初だったんですが、リフレッシュになるし、疲れが取れます。減量にもつながるので、オフに通うのがルーティーンのようになったんです。時間があるときはほぼ毎日行ってますし、調子が良くなる気がします。昔から温泉も好きで、ボートレーサーになってからは、全国の温泉を回りたいな、と思うようにもなりました。シリーズが終わったあと、温泉に行くと決めておけば、レース中のモチベーションを高めることにもつながりますね」
Style2.プライベートではストレスをためず、シリーズ中は完全オン!
食事に関しては、オンとオフをはっきりと分けているとのことだ。
「プライベートではあまり体重とかを気にせず、セーブすることなく食べたり、お酒を飲んだりしていて、レース場に入ったらオンにして減量に努めるようにしています。宿舎でちゃんと夜ごはんを食べるということは、もう何年もしてないですね。バナナやヨーグルトだけを食べるとか、そんな感じです。つらくはないですね。それが仕事だから、という意識です。普段から食事をすごくセーブしてる人もいるし、そういう人はすごいなって思いますけど、わたしはプライベートの時間にストレスをためないようにしたいんです。仕事に入ってから6日間、自分に厳しくするとかは、全然、大丈夫です」
Style3.オフには“新幹線”でジムに通う
オンとオフを完全に分けているのは主に食事面で、レースが入っていない期間(シリーズ間)に練習に行くことなどは苦にならないという。最近はオフ中のトレーニングにも励んでいるそうだ。
「丸野くんが京都でマルトレをやっているジムがありますよね(109期の丸野一樹選手がジムトレーナーの八木賀史さんと共にボートレーサーに特化したトレーニングを考案。それが「マルトレ」と呼ばれる)。そこに通うようになったんです。トレーニングにめいっぱい時間を使おうかな、と考えたからです。わたしが住んでいるのは福岡ですけど、始発で行って日帰りしたり、シリーズとシリーズのあいだに立ち寄ったり。気がついたら新幹線に乗っていることもあるくらいです。筋肉をつけるというより、ボートレーサーとして理想的な体の使い方を学ぼうとしている感じです。そういう意味での変化はすごく感じられているし、結果が伴ってる気はします。本当に身につくのはこれからだと思うので、続けていきたいですね」
Style4.師匠として弟子には教えられるすべてを教える
シリーズ間にはレース場へ練習に行くことも増えたというが、その理由のひとつが神里琴音選手(128期)を弟子にしたことだ。ボートレースの世界では、新人レーサーが特定の先輩に付いて必要なことを学んでいく慣習がある。制度のようなものではないが、伝統的な“師匠と弟子”の関係が築かれる。
「弟子ができたことでやることは増えましたね。一緒にプロペラを叩いたり、練習したり……。どんな師匠になりたいかですか? う~ん、そういうのを言葉にするのは難しいんですけど、“ついていきたい”って思ってもらえるような師匠になりたいですね。人に何かを伝えるのは苦手なほうなので、(見て学んでもらう)お手本になれたらいいですね。自分に教えられることはすべて教えられたらいいなって思っています。神里ちゃんのほうから(師匠になってくださいと)言ってきてくれたんですけど、“師匠になったからには”できることは全部やりたい感じです」
Style5.タイム(レコード)にはこだわる
2021年10月にはボートレース芦屋で、当時のモーターの最速タイムを更新したが、もともと“タイムへのこだわり”は強いという。タイムが成績(勝ち上がりや賞金)と直接、結びつくことは少ないのがこの世界だが……。
「エンジンが仕上がっていなければタイムが出ないので、最初は仕上がり具合の参考にするためにタイムを意識しはじめたんです。いいタイムが出ればすごく嬉しいですし、いつのまにか、かなりこだわるようになりました。展示タイム(レース前に行われる展示航走のタイム)もめちゃくちゃ気にしますし、自分の場合は、直線タイムより1周タイムやまわり足タイムを気にします。乗り心地(の良さ)を求めていれば自然に出足(加速)も良くなるし、それが好きなセッティングなんです。伸び(直線のスピード)はあまり気にせず、普通程度あればいいかなという感じです。思ったように仕上がってくればタイムを狙います」
Style6.縁起もかつがないわけではない
勝負の世界では縁起やジンクスが注目されることも多い。渡邉選手の場合、勝ち運につなげるための決まったルーティンはもたないが、縁起をかつぐ意識がまったくないわけではないようだ。
「そのときそのときのブームというんですかね。前検日にカツサンドを食べたら優勝できたことがあって、そのあとはいつも前検日にカツサンドを食べるようにしてたんですけど、いつのまにかやめていました(笑)。浜名湖のレディースチャンピオン(2021年)のときは、直前に真っ黄色のカバンを買ったら5号艇で優出できたので(5号艇のレーサーの勝負服の色が黄色)、そのあと、黄色いものを身に着けるようにもなりました。いまの髪の色ですか? これは関係なくて、髪の毛を寄付しようと思ってベリーショートにしたとき、イメージを変えるために染めたんです。髪が伸びたら30センチ切って寄付するということで、寄付したのはこれが2回目です。家が美容院なので知ってたんですが、ただ切るだけより何かの役に立てたならいいなって感覚です」
これからどんなレーサーになっていきたいかを聞くと、「誰が見ても楽しそうに仕事しているのを出していきたい」とのことだった。それでも、求めたいのは当然、結果だ。「目標は一番になること。すべての一番になりたいし、なるって決めてるんです」――。ユニークな個性やスタイルを持つ渡邉選手だが、その言葉は力強い!