
やらぬ後悔よりやる後悔
2024年にはボートレース界最高峰のSGレース2節に参戦し、年末には女子レーサーの頂上決戦「クイーンズクライマックス」にも出場を果たした。2025年2月19日、ボートレース浜名湖で開幕する新設のプレミアムGⅠ「スピードクイーンメモリアル」にも、有力レーサーのひとりとして出場予定だ。勢いに乗る西橋奈未選手が中学生時代から大切にしてきた言葉が「為せば成る 為さねば成らぬ何事も」なのだという。
「歴史が好きで、いろいろ調べているうちに見つけた言葉です(米沢藩主・上杉鷹山の言葉)。響きが格好いいし、なんとなく頭から離れずにいるうちに心の支えのようにもなっていきました。『やらぬ後悔よりやる後悔』という言葉もありますが、言わんとしていることは似ていると思うんです。ボートレースでもデビューしてしばらくは、思いついたことをやらずに後悔することがあったんですが、(この2つの言葉のおかげで)ひらめいたことがあれば、ためらわずにやれるようになったんです」
失敗と成功の経験を重ねていくうちに“思い立ったら即行動”を地で行けるようにもなっていった。
「A級になってからはとくにそうですね。2024年11月のレディースチャレンジカップでも、乗っていて違和感があり、このまま何もしなければ勝てないと思って、初日にすぐモーターの部品交換をしたんです。それに合わせて調整していったことがパズルのピースがピタッとはまるようにうまくいきました」
「為せば成る」という言葉は、常に頭にあるわけではないのだという。しかし、失敗して落ち込んでいるようなとき、この言葉を思い出すと、自分の軸を取り戻すことにもつながるそうだ。
「迷いを捨てられる言葉ですね。整備などにしても、やらなくていいことは最初から思いつきもしないじゃないですか。百発百中といえるかはわかりませんけど、ひらめいたことは当たるものだと自分の勘に自信を持てるようになっていったんです。ボートレーサーという仕事に就いて、第六感的なものが研ぎ澄まされてきた気もしています」
多くの人に名前を覚えてもらいたい
ボートレースの世界には、引退後も名前が思い出されるようなレジェンドレーサーや、多くのファンに応援され続けているスターレーサーが存在している。そういう存在に近づきたい憧れは持っている。
「やっぱり名前を覚えてもらって、ファンの人たちからフルネームで呼ばれたりするのは嬉しいです。レーサー冥利に尽きると思うんです。『志は高く、目標は低く』という言葉がありますよね。私にもそういうころがあって、デビュー当時から目標として大きなことは口にはしていません。『たくさんの人に愛されるレーサーになりたい』ということだけをずっと言ってきました。ファン投票で選出されるボートレースオールスターなどに出場できるのはすごく光栄なことだし、毎年選ばれるようなレーサーになりたいですね。できるだけ多くのSGで走りたいとも思っています」
新しく始めることは楽しい!
2025年に第1回大会が開催されるスピードクイーンメモリアルは、選考期間の1年間に各レース場で最も早いレースタイムを記録した24人のレーサーとレース場から推薦されたレーサーなどが出場できる大会だ。レースタイムすなわちスピードが選出基準になる初めてのビッグレースということでも注目されている。
「SGなどのレースで通用するようになるためにもスピードは不可欠の要素ですから、すごく面白い選出基準だと思います。B1級のレーサーでも、タイムを出せば出場権を得られますからね。私も毎節一回くらいはタイムを出そうとするほうなんですが、タイムで出場権が取れて(ボートレース鳴門で1位タイムをマーク)、よかったなってホッとしています」
この大会で優勝すれば、26年3月開催のボートレースクラシックの出場権を獲得できるのも大きい。
「これまで出場できたSGはファン投票やレース場推薦で出られたものなので、自力でSG出場を果たしたい気持ちはすごくあるんです。今度の大会でもその可能性があるわけなので、そこは意識しています」
第1回大会なので、優勝すれば“初代スピードクイーン”という称号も得られる。
「そういう称号は格好いいし、名前が残るのでいいですね。それと優勝者は表彰式でティアラとかマントとかで着飾らせてもらえるのかな、って(笑)。初めてなのでそういう演出があるのかどうかもわからず、ワクワクします。新しく始めることは楽しいですよね。もちろん、自分がその表彰台に立ちたいですけど、欲を口にすると、うまくいかないものなので、そうなれたらいいなって心の中で思っておくことにします」
登録番号4961身長156cm
119期
石川県出身
福井支部所属
2016年にデビュー。2020年11月、芦屋で初優勝。2020年、レディースチャンピオン(多摩川)でGⅠ初出場。2021年、レディースチャンピオン(浜名湖)でGⅠ初優出。2024年にはボートレースオールスター(多摩川)とボートレースメモリアル(丸亀)のSG2節に出場。2024年末にはクイーンズクライマックス(蒲郡)初出場を果たした。
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