夢は現実にできる、無限の可能性がある
ボートレース界の最高の栄誉のひとつであるゴールデンレーサー賞も受賞した平本真之選手が大切にしている言葉は2つ、「夢現」と「やればできる」だ。
「夢現については造語のようなものだと思うんですが、高校時代の野球部の監督がこの言葉を“むげん”と読んで、よく使われていたんです。夢は現実にできる、そこには無限の可能性がある――というふうに教えられていました。当時から惹かれていた言葉だったので、レーサーになってから監督にお会いしたときに『この言葉を使わせてもらっていいですか?』と確認して、サインにも書き込むようになったんです」
夢現という言葉にそんな意味が持たせられているなら、「やればできる」ともリンクする。
「やればできるは、大好きなアーティストがよく使っている言葉でもあるんです。意味は言葉どおりですけど、常に前向きな姿勢でいれば、運気もあがるんじゃないかという気持ちを重ねています。実際にレーサー紹介で『やればできる』と口にしたとき、成績が良かったことがあったんです。言霊じゃないけど、どんなことでも受け入れてポジティブでいるために大切な言葉になっています」
つらいときこそ笑顔でいたい
平本選手はもともとマイナス思考に陥りやすいタイプなのだという。いつも明るく振るまっているので周りからはそう見られにくいが、レースの失敗なども引きずることが多かった。
「そういう性格とも関係するんですが、もうひとつ好きな言葉を挙げるなら『つらいときこそ笑顔で』ですね。笑顔でいると、脳は勘違いして幸せホルモンを出してくれるという話も聞いたことがあります」
そんな平本選手のレーサー人生ではいくつかの転機があった。最初に挙げてくれたのは意外な一件だった。
「2013年のボートレースクラシック(平和島)の予選中に、危ないレースをして先頭に立っているレーサーを転覆させてしまったことがあったんです。周りの人たちからはずいぶん注意されて……。そのときから、レースは危険が伴うものだから勝ちたいという思いだけで走っていてはダメなんだという意識が自分の中でも強くなりました。直後はしゅんとしてしまい、1年くらい引きずりましたが、もっとレース中の視野を広げなければならないと考えるきっかけにもなり、翌年、同じ平和島でグランプリシリーズを優勝できたんです。このときは、当時の僕には少なかったまくりで勝てたので、まくりで勝つ気持ち良さを知ることにもつながりました」
「言葉の力」でダービー王に!
こうしてレースの幅が広がったことも躍進につながっている。そして迎えたのが、本人が「最大の転機」と話す2021年のボートレースダービーだ。
「これも平和島なんですけどね。このときは4日目の2走目に3着以内に入れば予選トップが確定する状況だったのに、そのレースで1着か2着を争えるポジションから失敗して6着になってしまったんです」
結果として予選順位は4位に下がり、準優勝戦は2号艇に乗ることになった。もし予選トップ通過できていれば、準優勝戦は1号艇になり、そこで勝てば優勝戦も1号艇になっていた。1号艇は最も勝利に近い場所といえるポールポジションだ。ダービー制覇への道が見えてきていた中にあり、痛すぎる後退だった……。
「ものすごく落ち込んだし、ショックでした。でも、その夜には、終わってしまったことは受け入れて、明日は明日で自分のやるべきことをしっかりやらなければならないってポジティブになることだけを考えました。それこそ、やればできる!と。それで準優勝戦で1着を取れて、優勝戦は1号艇になり、勝つことができたんです。すごく落ち込んだところから復活できたのには言葉の力もあったと思います。もし、あのとき気持ちを切り替えられずに沈んだまま終わっていたら、レーサーを続けているあいだずっと這い上がれないんじゃないかとも思ったくらいでしたから。あそこでV字回復できたのは今後にとってもすごく大きいことになりました」
このときは「何がなんでも明日はやらないかん!」という気持ちになれたのだという。だからこそ平本選手は、ダービーという栄冠を手にできたのだろう。2022年は、地元・常滑で行なわれるダービーの連覇、そして念願のグランプリ制覇を目指すつもりだ。ただし、平本選手は、単に結果だけを追い求めるレーサーではない。
「みんなに愛されるレーサーになりたいんです。怖い顔をしているより笑顔でいたほうが人も集まると思うんで、そういう人間になりたい。そして、できるだけ長くレーサーを続けていたいと思っています」
登録番号4337身長160cm
96期
愛知県出身
愛知支部所属
2014年グランプリシリーズ(平和島)、2016年ボートレースオールスター(尼崎)、2021年ボートレースダービー(平和島)とSGは3優勝! 2021年は受賞条件をみたして史上8人目のゴールデンレーサーにもなっている。