グランプリを制した一番弟子、白井英治との信頼関係
今村氏の遺伝子を引き継ぐ一番弟子として知られるのが白井英治選手。2022年にSGグランプリを制するなど、SGは3度優勝しているトップレーサーだ。
デビュー当初から、この子は放っておいてもA級にはなるなと思いましたね。SGを獲れるレーサーになれるかは想像もつきませんでしたが、上に行くことは確信できていました。とにかく思いきりが良くて、最初から怖気ずくことなくレースができていた。レースに対しては誰でも「怖い」という感覚を持ってもおかしくないのに、彼の場合はそれがなかった。それもレースだけじゃないんですよ。若いときにスキーに誘って、ちょっと滑れるようになって、急斜面に連れて行ったことがありました。初心者ならためらうような斜面でしたが、「行け」と言ったら、「はい!」と返事して迷わず滑っていきました。すぐ先で転びましたけど(笑)、彼は本当に思いきりがよくて度胸がありますね。
私はグランプリを優勝できないまま引退していたので、白井がグランプリで優勝したときには感極まってしまいました。グランプリは白井に託すしかないなと思っていましたから、実際に私ができなかったことをやり遂げてくれた姿を見て、熱いものがこみ上げてきてしまいましたね。今も私を慕ってくれるし、人間的にも素晴らしい。白井に限らず、ボートレーサーはみんな礼儀もしっかりしていて、どこに出しても恥ずかしくない人間ばかりです。それもこの業界でやってきた私の自慢ですね。白井にはできるだけ長く、トップの地位にいてほしいです。
次代のトップ女子レーサー、清水愛海にかける期待
今村氏が所属していた山口支部では、今村氏の引退と時を合わせるように清水愛海選手がデビューした。ボートレーサー養成所時代からトップの成績を残していた逸材だ。
彼女はまだ粗削りな部分もあって改善点も多いですが、ハンドルを入れるスピードはズバ抜けていると思います。転覆することが増えても、それで臆病になったりする様子もありません。気持ちも強いので、これからますます成長していくのは間違いないですね。
僕たちが若かった頃は、6コースからのレースを続けて地力をつけていたものですが、最近のレーサーたちは内寄りのコースからレースを始めることが早くなっている。そうすると早くからいい成績をとれるようになるのですが、上に行ったときに壁にぶつかりやすいものなんです。なので彼女に対しては「もっと外からのレースを勉強したほうがいい」と話したこともあります。
彼女の師匠である原田篤志選手とも相談しながら、時折アドバイスをしてるんです。彼女のほうから電話してくることもあります。私に連絡してくる若手や女子はあまりいないですけど(笑)、それができるくらいやる気があるんだと思います。彼女にはSGやGⅠを走るレーサーではなく、SGやGⅠを獲るレーサーになってほしいですね。それが出来得る素質を持っていると思います。