推しメンレーサー パワーのルーツ 08 Mental 精神力 関浩哉×豊田健士郎
0.01秒の差が勝負を分けるボートレースの世界。水上の格闘技と呼ばれる激しいレースに挑むボートレーサーたちの本音に、さまざまな“パワー(力)”の切り口から、ボートレース芸人 永島知洋さんが迫ります。
今回のテーマは「セルフマネジメント(自己管理能力)」!
MC
永島 知洋
Profile
プロフィール
井上 忠政
いのうえ ただまさ
1996年、大阪府生まれ。大阪支部。119期。ボートレーサー養成所時代はリーグ戦勝率1位。2021年、「プレミアムGIヤングダービー」にて、G1デビュー。同年、「トップルーキー 2021」に選出。大阪支部、期待のヤングレーサー。
中村 魁生
なかむら かいせい
1998年、大阪府生まれ。大阪支部。119期。2020年、「森下仁丹杯争奪 2020住之江ファイナル競走」にて、初優勝を地元で飾る。レーシングカートからボートレーサーに転身した、大阪支部の注目ルーキーのひとり。
ふたりの関係は?
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永島 知洋
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今回のテーマは「セルフマネジメント」です。おふたりは大阪支部の同期ということですけども、仲いいんですか?
右上から時計回りに、井上忠政選手、中村魁生選手、ボートレース芸人 永島知洋さん
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井上 忠政
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仲いいです!
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中村 魁生
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はい、仲いいです!
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永島 知洋
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ふたりで何するんですか?
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中村 魁生
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ゴルフ行ったり、一緒に飲みに行ったりしますね。
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永島 知洋
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へー。ふたりは、119期ですからデビューして約6年。どうですか?デビュー当初に、想像していた未来の通りになってますか?
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井上 忠政
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うーん、ボートレーサー養成所時代は、もっと早くステップアップできると思っていたんですが、甘くないですね。
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中村 魁生
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僕もそうですね。もうちょっと上に行けていると思っていましたし、もっとトントン拍子に進んでいくと思ってました。
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永島 知洋
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やっぱりデビューしてみると、違うものですか?
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中村 魁生
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ぜんぜん違いますね。
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永島 知洋
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養成所でのレースと、プロとして走るレース、何が違うんですか?
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中村 魁生
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養成所でも、現役のレーサーと一緒に走る「模擬レース」があります。でもそれは、訓練の一環であって、本番のレースではない。あくまで“模擬”なのに、普通に一緒に走れたことで、「イケるやん!」と当時は思っていたんですけど、実際デビューしてみたら、現実は厳しかったです(苦笑)。
模擬レースのイメージ。デビューしてからも、スタートの練習や模擬レースなどでボートレーサーは技術を磨く
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永島 知洋
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プロの技術の高さを、本番でまざまざと見せつけられたわけですね。
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中村 魁生
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はい。
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永島 知洋
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井上選手も同期ですから、同じ経験をしてるわけですよね?
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井上 忠政
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そうですね。模擬レースのあと、みんなで「おれらイケるな!」って盛り上がってたんですけど、デビューしてからのレースではボロボロ、レベルの差を痛感しました(苦笑)。
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永島 知洋
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おふたりとも、そのときにもっと練習したり、努力したりという、今回のテーマ「セルフマネジメント」の重要性を感じたんじゃないですか?
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中村 魁生
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養成所時代から、応援してくれる人がいましたし、期待を裏切ったら駄目だと、あらためて気持ちを引き締めた瞬間だったかもしれません。
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井上 忠政
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僕もそうですね。プロの世界の厳しさを肌で感じました。
ボートレーサーになった、きっかけは?
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永島 知洋
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そもそも、おふたりは、どうしてボートレーサーになろうと思ったんですか?
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井上 忠政
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父の影響ですね。父がボートレースのファンで、小さい頃から「ボートレーサーになるんやで」と言われて育てられたのが大きかったですね。
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永島 知洋
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へー。中村選手は?
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中村 魁生
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僕はもともとレーシングカートをやっていたんです。ただ、すごいお金がかかるので、続けるかどうか悩んでいるときに、幼なじみの加藤翔馬がボートレーサーに転身したのを見て、自分もボートレーサーになろうと思いました。
ボートレーサーになる前は、レーシングカートに熱中していた中村選手
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永島 知洋
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加藤選手の影響なんですね。
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中村 魁生
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はい。彼の方が4期先輩なんですけど、僕があとから追いかけた感じです。ボートレーサーは「稼げる職業」というのも決め手になりました。
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永島 知洋
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なるほど。ふたりとも、養成所の試験は何回で受かったんですか?
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井上 忠政
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4回です。
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中村 魁生
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僕も4回です。
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永島 知洋
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あれ?てことはずっと、一緒に試験を受けてたわけですか?
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中村 魁生
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はい。だから養成所に入る前に、ちょっと仲良くなってました(笑)。
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永島 知洋
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4回も試験一緒に受けてるわけですもんね(笑)。
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中村 魁生
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たまたま受かった時期も一緒で、びっくりしました。
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永島 知洋
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一緒に合格というのは、かなりうれしかったんじゃないですか?
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井上 忠政
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4回目の試験のときは、ただただ必死でしたね。人生で最後の勉強だと思って、筆記試験もがんばって準備しましたし。で、ふた開けてみたら、魁生(中村選手)も受かっていて、めっちゃうれしかったです。
4回目の試験で合格をつかみ、2021年には「トップルーキー2021」に選出された井上選手
体重管理のために、していることは?
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永島 知洋
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ボートレーサーは、体重のセルフマネジメントも大切ですよね。
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中村 魁生
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そうですね。
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永島 知洋
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ボートレースは、体重がレースの勝敗に影響するため「最低体重制限(男子52キロ)」があります。軽い方が有利なのでこの体重を目指して、みなさん増量(52キロに満たない場合は差分の重りを着用する)や減量されていますけども、おふたりはどうですか?
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井上 忠政
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僕はめっちゃご飯、食べるんですよ。そうすると54キロくらいになっちゃうんですけど、1日抑えていれば、52.5キロくらいまで、すぐ落ちます。若いうちだけかもしれないですけど、現状はそこまで体重管理に苦しんでないですね。
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永島 知洋
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いいですね。中村選手はどうですか?
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中村 魁生
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僕は、体重が足りないので、レースの前は必ず、焼き肉に行きます。何もしないと、50キロ前後なので、2キロくらい常に増量しないといけない。だから宿舎でも、とにかく食べてます。誰よりも食堂に残って、最後まで食べてます。
体重をコントロールし、レースに臨む中村選手
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永島 知洋
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増やすのも大変ですね。
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中村 魁生
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で、さらに夜、カップラーメンを食べるようにしてるんですが、なぜか忠政(井上選手)もついてきます(笑)。
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永島 知洋
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なんでついて行くん?
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井上 忠政
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いや同期が、がんばってるんだから、応援してあげたいじゃないですか。あとは、ひとりだと寂しいかなって(笑)。
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永島 知洋
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優しさなのね(笑)。でも増量と減量、どっちが辛いんでしょうね。
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井上 忠政
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増量は、おいしいものを食べられますけど、減量はそもそも「食べられない」と考えると、増量の方がストレスは少ないと、僕自身は思っています。どっちも決して楽ではないですけど。
セルフマネジメントにつながっている趣味は?
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永島 知洋
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セルフマネジメントには、メンタルの強化や管理も含まれると思うんですけど、何かされていることはありますか?
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中村 魁生
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趣味のゴルフは、メンタルの強化にもつながっている気がします。
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永島 知洋
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ゴルフは、メンタルスポーツですもんね。
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中村 魁生
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このパターを決めれば「自己ベスト」っていう瞬間、すごいプレッシャーを感じます。で、だいたい外しちゃいます(笑)。
趣味のゴルフに興じる中村選手
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永島 知洋
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意識したら駄目になるんですよね。わかるなー。一方で、ボートレースにおけるメンタルコントロールはどうされていますか?
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中村 魁生
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常に真剣にレースと向き合うことで、「その日が自分のベスト」だと考えるようにしています。それでも結果が伴わないときは、自分が未熟だったと真摯に受け止めて反省しつつ、気持ちを切り替えることも大切にしています。
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永島 知洋
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レースは何日も続きますから、切り替えも大事ですよね。井上選手はどうですか?
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井上 忠政
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最近は気分転換に、アニメの『ONE PIECE(ワンピース)』をずっと観ています。
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永島 知洋
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『ONE PIECE』から、学んだことはありますか?
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井上 忠政
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あります!やっぱりサンジ(主人公の仲間のコック)の「海を見つけたい」というセリフには刺激を受けました。自分もボートレーサーとして、大きい舞台で勝ちたいという思いをずっと、持ち続けていなければと思いました。
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永島 知洋
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心の安定も、モチベーションの維持も、どちらもボートレーサーには大切ですし、それもセルフマネジメントの一環ですよね。
読者に伝えたいメッセージは?
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永島 知洋
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では最後に、おふたりから、この記事を読んでくれている方に、メッセージをお願いします。
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中村 魁生
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え、ちょっと待ってくださいよ!取材の準備してきたのに、これ!
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永島 知洋
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何をよ?
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中村 魁生
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質問に対して、事前に回答をメモしてきたんです!
事前に準備してきたメモを見せる中村選手
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永島 知洋
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まだ話せてないことありそう?
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中村 魁生
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……ゴルフでは、逆算してプレイするから、ボートレースでも逆算する力が活きている、とかですかね。
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永島 知洋
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でも、プレッシャーに負けてミスするんですよね?
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中村 魁生
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……はい(笑)。
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永島 知洋
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駄目やん!逆算できてないやん(笑)。井上選手はどうですか?何か補足あれば。
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井上 忠政
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毎年、自分の中で目標を立てていて、毎年それを達成してきました。今年2022年は優秀回数を増やすことを目標にしているので、しっかり達成したいです。
真剣な表情で目標を語る井上選手
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永島 知洋
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カッコいいじゃないですか。この流れでメッセージもお願いしていいですか?
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井上 忠政
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ありがとうございます(笑)。ボートレースは、僕もそうだったんですけど、スマホで見るのと、ボートレース場で見るのでは、ぜんぜん違います。水しぶきもエンジン音も臭いも感じられて、迫力満点だと思います。そこでしか味わえないものがあると僕は思っているので、よかったら1周1マーク(※)の攻防を見に来てください。
※1周1マーク:1周第1ターンマークの略。レースの勝敗を決する最も重要なポイントであり、ボートレースの醍醐味
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中村 魁生
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僕もぜひ、まずはボートレース場に来てほしいなと思います。そのなかでも特におすすめは「ボートレース住之江」(大阪府)です。スタンドと水面が近いので、いちばん迫力があるボートレース場だと思います。第1ターンマークのスプラッシュゾーンなんて、「ちょっと水かかるんちゃうか?」というくらいの近さです。ぜひ、見に来てください!
「ボートレース場で待ってます!」と言って手を振る、井上選手と中村選手